『臨界の芸術論 10年の《知》を編集する』
木津川河口に位置する「名村造船所跡地」にて、2004年から30年に渡り、芸術の拡張とその実践に取り組むNAMURA ART MEETING '04-'34は、開始から10年余を経ました。日本の近代を支えた重工業の遺構を舞台に、30年という長い時間をかけて《知》の諸相と向き合い、理論と実践の結節点を爆発的な表現として発信する、この壮大な実験が提起するものは、都市・大阪が内包する知と芸術の可能性にほかなりません。この一世代(ひとせだい)におよぶ芸術実験の第一期から第二期への移行の節目に、これまでの出来事の記録と記憶を編集・統合し、これからの10年を志向する趣意書として、新たな「臨界の芸術論」を提示します。
本プロジェクトの第二フェーズは、造船所の遺構そのものを創造的にアーカイブする実践の新たな2つの取り組みに着手します。まずは“30年間を芸術のひと連なりの現場”として捉えるNAMURA ART MEETINGの正史とも言える「アーカイブルームの創設」です。もうひとつは本拠を創造の場として知能させ作品としてアーカイブする試みです。この第一弾として、国際的に活躍する美術家・森村泰昌の国立国際美術館での大規模個展に連動した作品制作のプロダクション支援と、舞台セットなどによる展覧会「森村泰昌アナザーミュージアム」を開催します。
本拠ならではの試みを通じて、茫漠と広がった2034年までの〈これから〉が、未来を構築しようとする、すべての個人にとって、有為な手がかりとなることを願います。
NAMURA ART MEETING '04-'34アーカイブルーム
「NAMURA ART MEETING '04-'34」は、2004年のVol.00からVol.05に至るまで、数々の美術家・音楽家・哲学者・批評家・宗教人類学者などの方々とともに様々な芸術の提示や考察・検証、そして対話を重ねてきました。また、工場群のベイエリアのクルージングや中山製鉄所のツアーなど日本の近代化を象徴する産業構造への眼差しも重視してきました。その変遷や風景は膨大な映像と言葉として記録されています。そこで未来を創造するために過去と現在が出会う〈対場〉の空間としてのArchive Roomを創設します。新たに誕生したこの“情報と物質・過去と現在の臨界面”も2034年まで更新し続け、常に現在進行形の空間になるでしょう。
NAMURA ART MEETING '04-'34とは:
「名村造船所跡地」を舞台に'04年から30年間に渡り、芸術概念の拡張とその理論的実践に取り組む活動です。これまで浅田彰、磯崎新、柄谷行人、高橋悠治、ボアダムス、ヤノベケンジといった現代思想やアートの一線で活躍する方々とのコラボレーションを通して、知と芸術の可能性を追求してきました。